タバコと文化

絵画の中に描かれたタバコ

芸術の秋。なかなか外出やレジャーにいくこともままならない日々ですが、自宅でゆっくり芸術鑑賞をしてみてはいかがでしょうか。

絵画の良さは、一枚の絵の中に、その時代の文化や作者の人生が詰まっているところではないでしょうか。

タバコも文化の一つとして、世界中の絵画で多く描かれています。

今回はタバコにまつわる絵画を紹介します。

浮世絵に描かれた煙管(キセル)は江戸文化の象徴

日本が誇る絵画といえば、浮世絵。世界で高い評価を受け、海外の画家も浮世絵に影響を受けることもあります。

浮世絵では、煙管(キセル)が描かれていることが多くあります。江戸時代の煙管は、ファッションアイテム的な存在であり、時代と文化を象徴するものでした。また、煙管は遊女の間では、長いほど格が高く粋であると見られ、庶民では時代が進むにつれて短くなっていったそうです。

3大浮世絵師と言われるうちの2人、喜多川歌麿、東洲斎写楽の絵にも煙管が多く描かれています。

●喜多川歌麿

(左から)娘日時計・未ノ刻、当時全盛似顔揃・扇屋内 花扇

●東洲斎写楽

(左から)四世松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛、松本米三郎のけはい坂少将実はしのぶ

喜多川歌麿は吉原の遊女、東洲斎写楽は歌舞伎をテーマやモデルにし、江戸時代の文化を知ることもできます。

喜多川歌麿の絵をみて、あれ?と感じませんでしたか。左の絵には顔の輪郭の線が描かれていないんです。この「娘日時計」には、他にも「辰ノ刻」、「巳ノ刻」、「午ノ刻」、「申ノ刻」の5種類あるのですが、全て輪郭が描かれていません。そのためか、女性の柔らかな印象がより引き立っているように感じます。一方右の絵は、輪郭が描かれ、キリッとして女性の凛とした美しさが感じられますね。未ノ刻は午後2時頃。お昼休憩中に煙管を一服というところでしょうか。花扇は当時の扇谷で最高位の遊女。そのステイタスが煙管の長さにも表されています。

東洲斎写楽は、突然現れ突然姿を消した、謎の絵師。その期間わずか10カ月で145点ほどを発表した伝説ともいえる浮世絵師です。そのデビューを飾ったのが、「大首絵(おおくびえ)」の28点。これは歌舞伎役者の上半身を描いたものです。

特徴的なのが、作品の長~いタイトル。役名を作品名にしているんですね。どちらも「敵討乗合話」という演目に登場する役で、父を殺された姉妹の妹しのぶは、敵討ちをしようと“けはい坂少将”という遊女になります。そして、敵討ちのサポートをするのが肴屋五郎兵衛。2枚を並べてみると、2人で煙管を吸いながら相談しているようにも見えますね。

浮世絵の刺激を受けたゴッホは愛煙家

ゴッホは多くの自画像を残し、パイプをくわえている絵が多くあります。ゴッホの生涯は苦難の連続でしたが、最期も壮絶なものでした。

拳銃で自分の胸を打ったゴッホは、欲しいものはないかと医師に聞かれた際に「タバコを吸いたい」と言ったそうです。

(左から)麦わら帽子とパイプを持つ自画像、自画像(パイプをくわえた自画像) 、パイプをくわえ麦わら帽子をかぶった自画像 

ゴッホといえば、ひまわりや風景画が有名ですが、自画像は37点も残しているそうです。一つのモデルでこれだけタッチや雰囲気の違う絵になるなんて、練習の意味もあったとはいえ、その表現力の広さに驚かされます。

アール・ヌーボーを代表するミュシャ

しなやかに描かれた女性と幾何学な装飾が特徴的なミュシャの作品。ミュシャは、アール・ヌーボーを代表するグラフィックデザイナー。古典や神話の世界を描いたものが多くありますが、企業ポスターやカレンダーなど多く手掛けていました。その一つ、JOBは、当時タバコの巻紙を作っていたJOB社宣伝のために制作されたポスターです。

当時、タバコは男性が吸うものというイメージがありましたが、女性もターゲットに広げようと、あえて優雅にタバコを吸う女性をテーマにしたポスターをミュシャに依頼。その宣伝方法は大成功で。このポスターは売上に大きく貢献し、そして、広告に新しい芸術性を生み出しました。世界的に有名な画家の作品がポスターでみられるのも絵画の見どころの一つかもしれません。

ジョブ(アルフォンス・ミュシャ画)

実はミュシャも浮世絵の影響を受けた画家のひとり。高く結い上げた髪や流れるような毛先、煙が流れる様子は、どことなく浮世絵の雰囲気を漂わせています。そして、この女性のタバコを持つ手のしぐさや目線、これも浮世絵とどこか似ていませんか。このように絵画が描かれた背景や共通点を見つけるのも、絵画の楽しみの一つではないでしょうか。

禁煙推進ライター 松本澄子

禁煙をお考えの方へ
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