タバコと文化

江戸幕府はタバコの害を知っていた?

今回はタバコの歴史、江戸時代編です。

今や世界中で禁煙が進められ、様々な国で禁煙に対する取り組みが行われています。海外では、国土全面禁煙の法律が成立した国もあります。日本でも近年、受動喫煙防止対策が強化されてきましたが、まだ「タバコ政策後進国」といわれている状況です。

しかし、日本におけるタバコの歴史を見てみると、意外な事実もありました。実は、タバコ文化が庶民にも広まった江戸時代には、タバコを禁止する法律があったのです。

今回は、江戸時代のタバコ事情をご紹介していきます。

日本で初めてタバコを吸ったのは、徳川家康!?

タバコが日本に伝わったのは、16世紀末という説がありますが、それ以前にもタバコに関する文献もあることから、日本に伝わった時期は明確にはされていません。

タバコに関する文献のひとつに、「ブルギーリョスの報告書」があります。これは、スペイン系のフランシスコ会修道士のブルギーリョスが残したものです。

そこには、江戸幕府が開かれる2年前の1601年(慶長6年)、ブルギーリョスを含めた修道士3人が、徳川家康に謁見。その時病に臥せていた家康に、治療薬としてタバコを献上したという記述が残されていました。

もしこのタバコを家康が吸っていたとしたら、日本初の喫煙者は家康だったのかもしれません。

タバコは当初、薬草として消毒や止血などに用いられていましたが、そのうち嗜好品として広がっていくようになります。

当時の日本では、浮世絵にも多く見られるように、刻んだタバコ葉を煙管に詰めて吸っていました。その姿が一般庶民にも広がり、日本でも広くタバコが吸われるようになったのです。

タバコの流行に危機を感じた幕府が出した「禁煙令」

一般庶民にも広がっていった背景に「かぶき者」の存在がありました。「かぶき者」は、派手な格好で街を練り歩き、身なりや言動の変わった人のこと。この集団は町の人々から恐れられていた存在で、煙管を吸いながら暴力を振るうなど、町の秩序はどんどん悪化していきました。これを取り締まるため、1609年(慶長14年)に日本で初めてとされる「禁煙令」が出されました。時の将軍は2代目将軍の徳川秀忠。特に取り締まりが厳しかったのが薩摩藩で、違反者は死刑となる場合もあったそうです。

しかし、それでもタバコの流行は止まりません。1612年(慶長17年)にはさらに厳しい禁煙令が出されました。その内容は、喫煙の他、タバコの売買、流通、さらにはタバコ葉の栽培までも禁ずるというものでした。そのため、畑のタバコは抜かれ、所持するタバコまで焼却されていたそうです。

しかし、それだけ厳しいにも関わらず、タバコはさらに広まっていきます。その広まりを幕府は止めることができず、次第に喫煙やタバコの売買、タバコ葉の栽培を容認せざるを得なくなっていきます。その後、タバコ屋の登場や煙管といった、日本独特のタバコ文化の普及により、江戸から明治、大正、昭和と日本のタバコ産業は発達していきました。

今は「禁煙令」とまではいかないものの・・・

昭和半ばは、いつでもどこでもタバコは吸い放題。タバコの煙が苦手な人にとっては、苦しい時代だったことでしょう。それが徐々にタバコの害が明らかになってきたことで、2018年7月、健康増進法の一部を改正する法律が成立。これにより、望まない受動喫煙を防止するための取り組みが強化され、2020年4月1日に全面施行されました。

その内容は、

・多くの施設において屋内原則禁煙

・20歳未満の方は喫煙エリアへ立ち入り禁止

・屋内での喫煙には喫煙室の設置が必要

・喫煙室の標識掲示の義務

など、タバコの規制が強化。昭和の時代と比べると、今は喫煙者にとってはとてもつらい時代になりつつあります。

だからといって、「はい、タバコやめますね」とはならないのが喫煙者の常。身体がニコチン依存から抜け出せないので、喫煙者にとってタバコをやめることは、そう簡単には成しえません。

そういう方に試していただきたいのが「離煙パイプ」です。1日にニコチン摂取量を3%ずつ減らしていくプログラム。この3%というのがポイントで、自分でも気づかないくらいわずかなニコチン量を減らしていくことで、徐々にニコチンがなくても平気な身体になっていくのです。

江戸時代には「風紀を乱す」ものとして、禁止されていたタバコ。時代の流れと共にタバコを吸う状況も変化していく中、タバコを吸う側も意識を変えていかないといけないのかもしれません。

今すぐにタバコを断てなくても、少しずつ禁煙に向かっていきたいものです。

禁煙推進ライター 松本澄子

(参考)

上野堅實著「タバコの歴史」大修館書店 1998年

大人の嗜好品研究会編「タバコを知ってタバコをやめる 煙草の蘊蓄」彩図社 2005年

禁煙をお考えの方へ
いつものタバコを好きなだけお吸いください。
大丈夫、タバコはやめられますから。


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