タバコと文化

ヨーロッパ人未開の地、アメリカ大陸で出会ったタバコ

コロンブスがアメリカ大陸を発見して以降の大航海時代、コロンブス一行とタバコとの出会いはどういうものだったのでしょうか。また、当時タバコはどのように扱われていたのでしょうか。

今回は、タバコがヨーロッパに伝えられた頃のお話を少し掘り下げた、タバコの歴史シリーズを紹介します。

アメリカ大陸からヨーロッパにタバコが伝わった大航海時代

大航海時代とは、15世紀半ばから17世紀半ば頃、ヨーロッパ諸国によるアフリカ、アジア、アメリカ大陸を目指した大規模な航海が行われていた時代です。

この頃のアメリカ大陸では、アステカ文明・インカ文明が栄え、すでに喫煙の習慣が根付いていました。

スペイン国王の支援を受け、コロンブス一行は、1492年に北アメリカと南アメリカに渡り、さらに西インド諸島にあるサンサルバドル島に到着します。

コロンブス一行がアメリカ大陸に到着して以降は、スペインに続き、ポルトガルも航路を開拓。ヨーロッパ人の探検家や征服者などがアメリカ大陸、アジア大陸に渡り、征服や略奪、破壊といった侵略を繰り返します。

その一方で現地の食や文化などもヨーロッパに伝わります。その中のひとつが“タバコ”です。その結果タバコは、ヨーロッパ人によって世界各地に伝えられていきました。

タバコの第一発見者はコロンブス

コロンブス一行がアメリカ大陸に到着した際、そこで初めてタバコを発見しました。しかし発見当初、彼らはそれが何なのか理解していませんでした。

先住民との交流をしていく中、コロンブス一行は装飾品などを贈り、そのお返しとして贈られた中に見たのが、またもやタバコでした。この時の記録には「香り高い乾燥した葉」という記述しかなく、まだタバコがどのようなものか分かっていません。

それ以降も西インド諸島を探検していく中、行く先々で贈られる「香り高い乾燥した葉」。先住民にとって大切なものであることは分かっていても、それが一体何の葉なのか、どのように使うものかは理解できずにいました。

そしてコロンブス一行がコルバ島(現在のキューバ)に到着した際、ついに「香り高い乾燥した葉」を吸っている先住民を目撃。その時こそ初めてヨーロッパ人が「喫煙」を知った瞬間です。

コロンブス一行に続き、タバコはアメリカ大陸に到達した多くの航海士たちによって、ヨーロッパ各国に持ち帰られます。そしてそれはヨーロッパ中に広まり、さらにヨーロッパの植民地となっていたアジアにも伝わっていきました。

ヨーロッパ人は、その頃すでにニコチン依存症に気づいていた!?

コロンブスの後、続々とアメリカ大陸に到着したヨーロッパ人も、先住民の喫煙の風習を直に目撃することになります。

司祭であり征服者として大西洋を渡った、ラス・カサスの『インディアス史』には、次のような内容が記載されています。

ラス・カサスがエスパニョーラ島で喫煙をしていたエスパーニャ人に対して、それは悪癖であるとなじると、エスパーニャ人は「吸うのをやめることは自分の手に負えない」と答えたそうです。

また、スペインの植民地行政官であるオビエドの『インディアス博物誌』にもこんな内容が。

アメリカ大陸がヨーロッパの植民地となった中で、激減した先住民の代わりに奴隷として連れられたのはアフリカ人。そのアフリカ人たちが喫煙するのは、仕事で疲れ切ったとき。タバコが疲れを癒してくれるからと、言っていたそうです。

このように、先住民やアフリカ人が行っていた喫煙習慣は、まさにニコチン依存症だったのでは!?と感じませんか。

ちなみに、疲れが癒える、気が紛れるといったことから、ヨーロッパでも当初は薬用として使われていたこともあったそうです。

当時はタバコについて何の研究もされず、もちろん成分も作用も知られていません。そんな中、ヨーロッパ人の一部はタバコの虜になり、現代人同様にその行動に違和感を覚えていた。これは、ヨーロッパ人が当初からニコチン依存症に気づいていた証拠なのかもしれませんね。

禁煙ライター 黒田知子

参考
上野堅實著『タバコの歴史』大修館書店 1998年
大人の嗜好品研究会編『タバコを知ってタバコをやめる 煙草の蘊蓄』彩図社 2005年

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