タバコと文化

神の存在があった時代、そこにタバコも存在していた

タバコはアメリカ原産です。実はタバコがいつ頃から利用されたり摂取したりするようになったかは分かっていません。しかし、喫煙文化は、7世紀末までにはアメリカ先住民の間で生まれていたといわれています。

今と同じような嗜好品としてだけではなく、儀式に使ったり、神への捧げものだったり、薬などとして使われていたようです。

現代では崇拝されるどころか、まさに煙たがられるものになったタバコですが、登場した頃は、どのように使われていたのか。今回はその歴史を紐解いてみましょう。

人類で初めてタバコを吸ったのはマヤ族!?

マヤ文明は、紀元前2000年頃から16世紀頃まで、メキシコ、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドルの5国にまたがって栄えていた文明です。

人類がタバコを利用し始めた時期については、詳しく分かっていません。ただ、マヤ文明の中で建てられた神殿の中に、タバコにまつわる最古の遺跡といわれるものがあります。それは、「エル・フマドール」という壁面に彫られた「たばこを吸う神」の姿。

「エル・フマドール」は現在のメキシコのチアパス州にある、パレンケ遺跡の中にある「十字架の神殿」の壁面のレリーフ。マヤの神々の名でも重要な神とされ、「L神」とも呼ばれています。地下世界・作物の豊穣をもたらす、雨に関係している神と考えられ、その姿は、タバコを吸っているように見えるそうです。

L神は、擬人化された神といわれていて、L神がマヤ族の中で神と崇められていた人物だったとしたら、世界最古の喫煙者はマヤ族ということになるのかもしれません。

このようにタバコを嗜んでいるかのような神の姿が、壁面の他にも鉢や壺にも描かれ、残されています。

マヤ族ではタバコは神聖なもの

マヤ文明では、神に祈る祭りなどでの儀式に、タバコは欠かせないものであったそうです。タバコを火にくべてその燃える姿、炎の形、空に昇っていく紫煙は、神々の供え物。そしてさらに、神託をもたらすものと考えられ、占いや戦いの勝敗を導くものとして使われていたのだとか。

また、タバコは病気治療にも使われていたようです。人々が病気にかかるのは、悪霊のせいであり、呪術師がタバコを使って悪霊を追い払う。そのような形でタバコが使われていたといわれています。

そして、タバコは神聖なものであると同時に、嗜好品としても楽しまれていました。

マヤ文明が栄えた地域、メソアメリカ(現在の中米地域)では、貴族や戦士たちが特権としてタバコを楽しんでいました。その後一般の人々にも祝いの場で出されるようになりました。その結果、多くの人々の間で喫煙の習慣が広まっていったそうです。

現代のタバコといえば

古代文明では神聖なものとして扱われてきたタバコ。時はめぐり現代ではどうでしょう。タバコは神聖扱いされるどころか、世界中で禁煙が進められる状況に大きく変化してきました。

時代が進むにつれ、タバコの成分やその影響が解明されてきたことによって、体に有害であることが分かりました。また、吸う人だけでなく周りにいる人までも健康を損なうとして、喫煙者の肩身は狭くなる一方。

でも喫煙される人にとっても、このような時代の流れは、必ずしも悪いことではありません。時代が進み、科学も化学も進歩したからこそ、体に悪いということが分かった。その上でタバコを吸うのなら、周りや自分の健康に配慮しながら吸えばいい。

もし、文明の進歩によりタバコの害が解き明かされてなかったら。呼吸がしづらくなるのは年のせい、歯が黒くなるのは自然のことと思いながら、何も考えずにタバコを吸い続けていたのかも知れません。そう考えると多少肩身の狭い思いがあったとしても、まあいいじゃないかと思えてきます。

そして今の時代、禁煙方法もどんどん進化してきています。

ただ意志の力だけでタバコをやめるのではなく、飲み薬やニコチンパッチ、ニコチンガム等様々な道具を使って禁煙する。そしていつものタバコを吸いながら無理をせず、禁煙できるのが離煙パイプ。禁煙したいなと思ったら、無理をせずに、自分に合った道具やスタイルを見つけて禁煙する。それがこの時代のスマートなやり方なのかもしれませんね。

禁煙ライター 黒田知子

参考
上野堅實著『タバコの歴史』大修館書店 1998年
大人の嗜好品研究会編『タバコを知ってタバコをやめる 煙草の蘊蓄』彩図社 2005年

禁煙をお考えの方へ
いつものタバコを好きなだけお吸いください。
大丈夫、タバコはやめられますから。


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