タバコを吸うと頭がすっきりする、一服するとリフレッシュできて仕事に取り組める。と聞くことがありますが、それは果たして本当でしょうか。
喫煙と脳の関係はとても深くつながり、時には高揚感を、時には不安感を持つこともあります。喫煙で脳の働きはどうなるのか、見ていきましょう。
タバコのニコチンが脳に影響を及ぼす
喫煙は、「百害あって一利なし」といわれるくらい、影響が多いもの。それは外見や肺だけではなく、脳にも影響があるのです。
タバコを吸うと脳でニコチンの安定作用によって、一時的に落ち着く、リラックスできるという勘違いをしてしまいます。しかし、実際はタバコを吸ったときはリラックスしていても、吸い終わると同時に今度は気持ちの落ち込みや不安感などが出てきます。
タバコによって脳の働きが低下する
α波はリラックスしている時に出てくる脳波。この状態になると、脳の血流が良くなって思考力もアップするといわれていることから、頭の回転が良くなると考えられています。
タバコを吸うと、一時的にα波が増えます。それなら、タバコを吸った方が頭の回転も良くなって仕事効率も良くなるんじゃないか、と思いますよね。でも実は全く逆です。
タバコを吸った後、数十分でα波は消えてしまいます。
実は、喫煙者は非喫煙者と比べて普段からα波が少ないことが分かっています。喫煙者がタバコを吸わない状況が長時間続いてイライラしてしまうのは、α波が足りていないためです。
そこでまたタバコを吸うとα波が増えてリラックスできた気になってしまう。
ニコチン欲求でのイライラとタバコを吸ったときのすっきり感を繰り返すことで、タバコ=リラックスできるものと脳が学習してしまうのです。
ニコチンを欲するとイライラして頭の回転も悪くなる。そこでタバコを吸うと、頭がすっきりして仕事がはかどるという間違った認識が植え付けられてしまったために、タバコが頭の回転をよくするというウワサになってしまったのだと考えられます。
つまり、喫煙者はタバコによって一時的に効率を上げているだけ。実際に仕事に集中している時はどうでしょうか。夢中になるとタバコのことは考えずに、気が付くと1時間~2時間経っていたということはありませんか。集中力や頭の回転にタバコは関係ありません。むしろ、タバコで離席する時間などトータルで見るとタバコを吸わない方が頭の回転が良いということが言えるのではないでしょうか。
タバコを吸わずにα波を増やすトレーニングを
プロのスポーツ選手は日頃から集中力を高めるためにα波トレーニングを行っているそうです。
α波はリラックスした状態に出る脳波なので、リラックスできる状態や環境を作ることがポイント。
例えば、タバコの代わりにお茶で一服も方法の一つです。そのほかにも、川のせせらぎや鳥の鳴き声などもα波を出すといわれますが、さすがに仕事中は難しいですよね。
仕事中にもできる方法は、青空を見る、良い香りを嗅ぐなどが良いかもしれません。デスクワークで凝り固まった体を伸ばすついでに窓から空を見たり、深呼吸をしたり、好きな香りのアロマオイルを染み込ませたものをデスクに置いておいたり、など、リラックスできる時間や空間を作ることができます。
リラックスするのは、禁煙中のイライラ対策にも効果的です。タバコがリラックスできるものだという勘違いを、別のもので上書きすることで、禁煙中のイライラを減らし、効率よい行動ができるようになるかもしれません。
禁煙ライター 黒田知子
参考
磯村毅著『脳内ドーパミンが決め手 「禁煙脳」のつくり方』青春出版社 2010年