喫煙は良くないのは分かる。でも喫煙シーンのある映画を観ることも悪い事なの?
世界中が禁煙社会になっている今、映像で喫煙シーンを流すことにも、とてもシビアな状況になっています。
映画は良くも悪くも人に影響を与えるものです。恋愛ものを観た後、自身のパートナーに優しくなったり、ヒーローものを観た後に、やる気がわいてきたり。でもタバコを吸うシーンが登場すると、その映画が批判の対象となってしまう事もあります。
喫煙は法律で禁じられていませんし、映像を見ているだけで受動喫煙にはなりません。なのにどうして嫌悪されるようになってしまったのでしょうか。
タバコが「悪」として見られる時代
映画だけでなく、テレビ番組でも喫煙シーンが流れると、苦情が来る時代。
喫煙は「百害あって一利なし」と言われるくらいのものですから、言わずもがな「悪」と見なされがちです。喫煙は吸っている本人だけでなく、煙が広がることで、周囲にも健康被害を与えてしまいます。ただし、この「タバコを吸う」という行為は個人の嗜好ですので、麻薬と違って吸ったからといって、何ら罰せられることはありません。
同じように、20歳からと法律で定められているお酒はどうでしょう。
お酒もタバコと同じように、飲み続けていれば依存症になる可能性もあります。でもお酒を飲むシーンに対しては、規制するべきだという声は聞こえてきません。
なぜタバコだけが排除しようとされているのでしょうか。
お酒とたばこの明らかな違いは周囲への影響です。
お酒は、飲んでいる人だけに影響するもの。対してタバコは、喫煙者とその周りの健康を脅かすものです。
人は健康で長生きしたいと思うものです。でもそこでタバコ“だけ”が「悪」とされるのは、喫煙者にとっては腑に落ちない部分もあるのではないでしょうか。
それでも喫煙シーンを無くすことはできない
映画の中でタバコを使わないことの最大のメリットは、そのシーンに憧れて真似をする人を増やさないことです。タバコを使わない演出は可能です。しかし、リアリティを追求する時に、タバコが必要な小道具となる場合もあります。
例えば、実在する人物を描いた映画の場合、その人物が愛煙家だったのなら、タバコが登場するのは必須です。逆にタバコが登場しないと、作品に違和感が出てくるのではないでしょうか。そして昭和の時代を描いた映画の場合、昭和時代にタバコはそこらじゅうで吸われていました。タバコは時代背景を表すうえでも重要なものなのです。
それを現代で表現すると、喫煙シーンがあるとして批判の対象になってしまう。大人から子供まで、多くの人に見てもらいたいのは、映画を作る人なら当然の思いです。でもタバコによって年齢制限が設けられることで、制作側にとっては「表現の自由」が制限されてしまう。非常に難しい問題ですよね。
タバコ=健康に悪いのは、世界共通の認識です。海外では喫煙シーンを制作しないとする制作会社も出てきて、今やタバコがない映画が常識になりつつあるのかもしれません。
映画に影響されて、タバコを吸い始めないようにできること
映画の俳優に憧れて、好奇心でタバコを吸ってしまったら、それはもうニコチン依存症の始まりです。
タバコは、最初の1本を吸っただけで、そこから依存症になり始めているのです。
そうならないためには、喫煙シーンをできるだけ無くしていくことが望ましいです。しかし、演出として必要な場合、海外では年齢制限を設けたり、上映時に反喫煙のCMを流したり、警告テロップを入れるなどの対策がとられています。
そして一番大事なのが、本人の意思です。喫煙シーンがある映画を製作することは悪い事ではありませんし、観ることも当然悪い事ではありません。見ている側がタバコに手を出さないという強い意志を持っていればいいのです。禁煙している人も、同様でしょう。
映画における表現の自由と同じように、タバコを吸うか吸わないかは本人の自由です。そこに吸わないという明確な意思さえあれば、たとえ喫煙シーンがあったとしても、それが「悪」になることはないと思いませんか。
タバコに影響されず、映画そのものを楽しめれば、それが一番ではないでしょうか。
禁煙推進ライター 松本澄子
参考
日本禁煙学会「映画の喫煙シーンはタバコを吸う子どもを増やす」
http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/%20%20MTC.pdf
日本禁煙学会 無煙映画大賞
http://www.jstc.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=3