今では考えられない!もっと自由だったタバコ。
今はどこに行っても「禁煙」「NO SMOKING」の文字ばかり。喫煙者にとっては、肩身の狭い時代になってしまいましたよね。「昔は良かった」なんて言ってしまいたくなるものです。
タバコの害がまだ強く言われていなかった時代、タバコを吸う場所に困ることはありませんでした。受動喫煙なんて言葉も言われていなかったんじゃないでしょうか。
今回は、昭和の時代にタイムスリップしてみましょう。
昭和はタバコの全盛期
昭和の時代が終わったのは、今から33年前。この頃の成人喫煙率は、男性で55.3%、女性で9.4%ありました。
現在(令和元年)の成人喫煙率は、男性で27.1%、女性で7.6%なので、昭和の終わりの喫煙率は非常に高いことが分かります。
さらにさかのぼって昭和40年、男性で82.3%、女性で15.7%。ほとんどの男性がタバコを吸っていた、日本でのタバコ全盛期の時代です。
出典:厚生労働省 最新たばこ情報 成人喫煙率より作成
※昭和40年~昭和63年は「JT全国喫煙者率調査」(全年齢)より引用(2018年終了)
平成元年~令和元年は「厚生労働省国民健康・栄養調査」(平均)より引用
https://www.health-net.or.jp/tobacco/front.html
タバコ全盛期は、いつでもどこでもタバコが吸えていた!
喫煙者にとっては夢のような時代と言えるのではないでしょうか。
この頃は、灰皿が設置されていない場所なんてないんじゃないか、と思うくらい、どこでも灰皿があり、タバコが吸えていました。
●大勢の方が利用する交通機関
交通機関では、電車、新幹線、飛行機、長距離バス、タクシー、駅のホーム。電車やバス、タクシーなどは、前の座席の背面や窓・ドア側に灰皿が設置されていました。
ちなみに、筆者は40代ですが、20年程前までは飛行機の中でタバコが吸えたのを覚えています。禁煙席と喫煙席に分かれているものの、特に仕切りもなく、喫煙席では自由にタバコが吸えました。煙が目に染みる~♪なんて、歌の文句のようなセリフが当たり前のような時代でした。
●多数が利用する施設
施設では、映画館やボウリング場、病院、役所などでも灰皿や喫煙所が設置されていました。
タバコを吸いながら映画を観る、遊びを楽しむ。それが普通にできていた時代です。
それに、今なら病院でタバコを吸うなんて、ありえない光景。病気を診てもらうために病院に来ているのに、横でプカプカとタバコを吸っている。病気を治したいのか、悪化させたいのか分かりませんよね。
さらには公共の場にあるトイレにも灰皿が設置されていたんです。
●喫茶店やレストランなどの飲食店
飲食店も同様に、テーブルに灰皿が置かれているのが当たり前。サービスの一環か、ご丁寧にマッチまで用意されているなんてこともありました。そのマッチをコレクションしている男性もよく見かけられました。
食事をしながら、コーヒーを飲みながら、デート中、いろんなシーンにタバコは欠かせない役割を担うアイテムでした。
●オフィス、路上
さらにオフィスでも自席でタバコが吸えていましたし、学校の職員室では先生がタバコをプカプカ吸う、路上喫煙も当たり前。道端にはタバコの吸い殻がそこら中にあるのが、日常風景でした。
喫煙者にとっては、なんていい時代!でも、非喫煙者にとっては?
これだけあちこちでタバコが吸えた時代ですが、非喫煙者は何も言わなかったのか、といえばそうではありません。
昭和53年(1978年)に、「嫌煙権運動」が始まったのです。これは、非喫煙者がきれいな空気を吸う事、タバコの煙が不快だということを権利として主張するもの。ただしそれは、喫煙をやめてほしいのではなく、公共の場所での禁煙や分煙を求めるものでした。
彼らは、国鉄(現在のJR)へ禁煙車両を設けること、駅構内に喫煙場所を設けることを申し出ていました。その甲斐もあってか、昭和57年(1982年)には、国鉄特急列車に禁煙車両が設置されました。
その後時代の変化に伴い、公共の場での禁煙・分煙という意識も広まっていき、レストランや飛行機、駅構内など、どんどん禁煙の場が増えていきました。
タバコによる健康被害が強く言われだしたのは、平成に入ってからのこと。
平成9年(1997年)の厚生白書に「生活習慣病」という言葉が初めて登場してからさらに本格的になります。それまでの厚生白書には、生活習慣病は成人病と記載されていましたが、成人病は喫煙や飲酒、食生活などの生活習慣が関わっていることから、生活習慣病と呼び変えられました。
2002年には、受動喫煙防止が盛り込まれた健康増進法がスタートし、分煙の意識が年を追うごとに高まっていきました。
現在では、ご存知の通り公共の場所での屋内はすべて禁煙、職場などでは喫煙室を設けることなどが義務化されました。
全盛期と比べると、言うまでもなく、喫煙者と非喫煙者の立場が逆転したのです。
喫煙者にとっては、喫煙所を探さなくてはいけなかったり、お酒を飲みながらタバコが吸えなかったり、不自由はあるでしょう。でも、これも自分や周りの人、多くの人の健康を守るために必要なことと考えてみませんか?
それが、今たばこをお吸いのあなたが、一歩前へと踏み出すきっかけになるかもしれません。
禁煙ライター 黒田知子